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個人の自己破産・借金整理

自己破産の場合の自由財産とは。

 自己破産手続きでは、どんな財産も処分しなければならないのでしょうか。

 破産手続き開始の決定がなされると、原則として破産者が有する一切の財産、その全部が「破産財団」となります。この破産財団とは、破産者の債務を弁済するために破産管財人によって管理・処分される財産を言います。このような破産財団に属する財産は、原則として全て現金化され、全て破産債権者に分配されることになります。なお、財産的価値のない人格権や身分上の権利は破産財団には入りません。以上が原則ですが、自然人の自己破産の場合、破産者が有している財産的価値のある財産であっても、一定の範囲のものは、破産財団に属さず、破産者の自由に処分できるものとして留まります。これを、自由財産といいます。自由財産の範囲は、破産法34条3項に規定されており、1)金銭99万円、2)差押禁止財産として規定されているものです。差押禁止財産とは、a)生活に欠く事が出来ない衣服、寝具、家具、台所用品、たたみ、建具 b)1ヶ月間に必要な食料及び燃料、c)農業を営む者における農具、種子など、d)漁業を営む者における魚網など、e)技術者、職人、労務者その他の主として自己の知的または肉体的労働に従事する者における業務に欠くことが出来ない器具その他のもの、f)印鑑、仏壇、日記、商業帳簿、勲章、学習に必要な書類など、未公表の著作物、義手義足、消防用の安全装置・消火器などを言います(民事執行法131条参照)。従って、99万円までの現金と、上記の差押禁止動産は、処分せずに保有し使用してよいということになります。なお、昨今破産法が改正され、その中で、破産者は自由財産の範囲の拡張を求めることができるとされました(新破産法34条4項、5項)。この申し立てに対して裁判所は、破産管財人の意見を聞きながら、破産者の生活状況、破産手続き開始決定時に有していた財産の種類・額、破産者が収入を得る見込みなどの事情を総合的に考慮して、その可否を決定することになります。その結果として、例えば、本来の自由財産以外に、例えば、20万円までの預貯金、見込み額20万円までの保険解約返戻金、見込み処分価額が20万円以下の自動車、電話加入権1本などについて、自由財産として特別に認めてもらえる可能性があります。個人破産者の自由財産については、あまりに少なすぎて再生できないという国の問題意識から、拡張される傾向にありますので、新法がどのように裁判所の実務で取り扱われるかはまだあまり明確ではありません(新破産法施行は本年3月1日)が、ある程度広く認められるのではないかと想定されます。

 執筆日20050921