- 過去の未払い生活費を財産分与において考慮することの可否
離婚に先立ち別居しましたが、夫は別居期間中の生活費を払ってくれませんでした。財産分与に際しては、支払ってくれなかった生活費も考慮されるのでしょうか。 離婚に先立って別居生活を送るということはめずらしくありません。その別居期間が長い場合には、それぞれに生活費(婚姻費用)が発生することになります。この点、民法では夫婦は婚姻から生じる費用を夫婦で分担すべき義務があることを定めています(760条)。ですから、別居状態になったとしても、他方配偶者の生活費の分担の義務は免れません。しかし、別居になった場合には、別居した配偶者に対する生活費の支払いがなされないことも多く、この点を離婚の際の財産分与において評価できないかという問題が出てくるわけです。最高裁は、財産分与は当事者双方の一切の事情を考慮すべきであり、婚姻継続中における過去の婚姻費用の分担の態様は右事情の一つに他ならないとして、財産分与の対象として考慮すべきことを認めています(最判昭和53年11月14日)。この場合、具体的な算定方法が問題になりますが、この点は別居中の双方の生活態様、収入、別居の原因などを考慮し、婚姻費用の分担を怠ったことにより他方に蓄積された財産に相当する部分を財産分与として清算すべきではないかと思われます(東京家裁昭和48年8月1日参照)。
執筆日20000830