- 配偶者の性交不能と離婚の可否
私は夫と結婚して5年になりますが、夫とは結婚してこの方、性交渉が一度もありません。たえかねて夫に訳を聞くと、夫は、結婚前から性交が不能であると初めて告白しました。私はそのことにショックを受け、現在離婚を決意しています。果たして離婚は可能でしょうか。 夫婦間の性交渉が、夫婦生活の重要な要素であるといえますので、一般的には性交不能の場合あるいは性交渉拒否の状態が長期間継続した場合には、婚姻を継続し難い重大な事由がある(民法770条1項5号)として、離婚が可能になると思われます。判例では夫が病気のため睾丸を切除していたところ、性交自体には問題がないという担当医の判断に従って婚姻したところ、1年半の間終始性交渉がなかったという事案について、婚姻を継続し難い重大な事由があるものとして妻からの離婚請求を認容しています(最判昭和37年2月6日)。また、婚姻に際し夫が性交できないことを告白せず、見合い結婚後、3年半の同居期間中性交渉がなかったという事例について、婚姻における性関係の重要性を指摘した上で、病気や老齢などから性関係を重視しない当事者間の合意があるような特段の事情のない限り、婚姻後長期間にわたり性交渉がないことは、婚姻を継続し難い重大な事由にあたるとしているものもあります(京都地判昭和62年5月12日)。あなたの場合も、性交がない状態が長く続いており、また、婚姻にあたってはそのことについての合意があったなどの事情も認められませんから、上記判例の見解に従えば、民法77条1項5号により、離婚請求可能ということになると思われます。
執筆日20000830