- 偽装の協議離婚届の効力と離婚意思
私の夫は病気で長期間入院しており、生活苦から生活保護をうけていました。そのうち私は勤めに出るようになり収入がえられるようになったところ、福祉課の担当員から不正受給になると指摘されました。そこで、生活保護の受給を継続するため、夫と協議の上偽装の離婚届を提出しました。その後夫が遺言を残さず死亡したため夫の財産を相続したいと思いますが、離婚は無効だと主張して相続することは可能でしょうか。 離婚届の提出により有効に離婚は成立していますから、あなたはもはや法律上の配偶者ではなく、したがって相続はできません。協議離婚が成立するには離婚の意思が双方に必要ですが、この離婚の意思が何を意味するのかは議論が分かれています。ある説は離婚の意思とは離婚届をする意思だけではなく、婚姻生活そのものを実質的に解消させる意思までも必要だとし、そのような意思がない場合離婚は無効とするものです。しかし、現在の判例ではこのような見解は取られていません。判例によれば、離婚する意思とは「離婚の届け出をする意思」であるとし、離婚届を出すときに、届出をしようという意思があれば、離婚の実体が偽装のものでも離婚は成立します。あなたの場合、判例に従うと、離婚届を出した時点では、離婚届を出そうとする意思が認められますから、離婚届けが受理されたことによって、離婚が有効に成立しています。ですから、あなたは法律上は妻という資格がないことになり、相続権は発生しません。
執筆日20000830